エキストラとして制服を着た生徒達や教師でごった返す校内。

人口密度が高くこの中から誰かを探そうとなると骨が折れそうだ。そんなことを考えながら、私は撮影が再開される様子をぼんやりと眺めていた。


昨日から今日にかけての出来事が全て夢ならいいのに、と思うものの薫くんが近くを通ろうが移動の時に隣にいようが、彼が話しかけてくることもなければ目が合うこともない。

改めて夢ではなく紛れもない現実だということを思い知らされて吐き気にも似た感覚をみぞおちのあたりに感じていた。


胃の痛みが限界に達して、近くにいたスタッフさんに一言声をかけて誰もいない自動販売機のある広場に逃げ込んだ。



「白戸さん、大丈夫?」



どのくらいそうしていたのかわからないが、お腹を押さえてうつむいてぎゅっと目を閉じているとそんな声が頭上から振ってきて、私は顔を上げた。