「知ってたんだね」
薫くんはぽつりとそう呟いて、目を伏せた。
長いまつ毛が頬に影を落として、薫くんの綺麗な瞳を隠してしまう。
どうして、目を見てくれないの?
「……ごめん、そのことは」
「やっ……!」
突然手首を掴まれて――今朝の城谷さんを思い出してしまって、反射的に薫くんを拒絶してしまった。
「……ご、めん……なさい……」
はっと我に返って顔を上げて謝ると、私がたった今拒絶したその人は酷く傷ついたようにぽかんと口を開けていた。
重い沈黙が流れて、薫くんが一瞬失った光をその瞳に取り戻した時には、もう零れそうなくらいに涙の膜を張っていた。



