「それと、北原さんとの熱愛報道だけど」
私が口を開くより先に、薫くんがそう切り出してきたので思わず押し黙った。
「事務所を通して正式に否定をしたからもう少ししたら収まると思う。ごめんね、言うのが遅くなって」
ふと、ひかるくんの言葉が頭をよぎる。
"かおくんの元カノだよ"――。
どうして薫くんはそのことについて何も教えてくれないんだろう。
「……北原さんが薫くんの元カノって、本当ですか?」
「え……?」
顔を上げると、薫くんは困ったような顔をしていた。それが何の感情から来るものなのか、今の私にはさっぱり検討もつかない。



