そんな複雑な気持ちを抱えながら、非常階段を登っていくこと、数分。
遂に私達はお目当の階にたどり着くそうだった。
橘くんの手が塞がっているので、私が扉を開けようとドアノブにで伸ばした瞬間、
突然ドアが内側から開けられて…
私もよく知った人物が顔を出した。
でも、その子は橘くんに視線を向けているから、ドアの陰にいる私の存在には気付いてないみたいだけど…
「ハルくん、遅いよ!!!
営業部の部長さんも待ってるんだから!
その荷物はどうしたの?」
と、彼女は言葉の端々に親密さを滲ませながら彼に話しかける。
会話に入るタイミングを失った私は、さらに陰から出にくくなってしまう。
どうしようかなぁー、と思案していると、橘くんが「総務部の白城さんの荷物、運ぶの手伝ってたんだよ」と、一言。
私はその言葉をきっかけにひょっこりとドアの陰から顔を出すと、彼女は少し驚きながらもにっこりと微笑んだ。
「わぁ!真帆ちゃんだ!!!
久しぶりだね、この会社だったんなんて全然知らなかった。
私、今日から営業補佐として異動して来たから、よろしくね!」
と昔を思い出させるような懐かしさを感じさせる笑顔で話しかけてきてくれた。
「…詩織ちゃんも久しぶり。
高校卒業してからは、なかなか会えてなかったもんね。
こちらこそ、よろしくね!」
数年ぶりに会って、昔と変わらない距離感で話をするのに少しばかり抵抗があったけど、話してみたら、それほど会ってなかった時間を感じないのは何故だろう。

