「そうなのか?」

幸助がクエスチョンマークを顔に貼り付け訊ねる。

「――愛の種は誰にでもある、ですね?」

噛み締めるように恵が言う。

「そう、誰にでもあるんだ」

叔父が大きな溜息を付く。

「ただ……愛は持っているだけじゃ幸せになれない。『与え』『与えられ』てこそ『幸せ』が訪れるんだ」

叔父さんもファイトだ!

「そっか、俺は母ちゃんにやる。そして、一緒に幸せになる」

そう言って幸助はなぜかお土産の缶を持ち上げる。

「――なぁ、お前、それってクッキーを食べたいだけじゃないのか?」

僕の言葉に幸助は、バレたかと舌を出す。

「何それぇ」

恵がアハハと弾けるように笑い出す。それにつられて幸助も笑い出す。運転席を見ると叔父も笑っている。

笑いと共に虹の彼方に雨雲が遠のき、青空が広がっていくのが見える。
薄れゆく虹を見ながら、愛の種について考える。

愛の種か……それが育たない限り僕のファーストキスはお預けなのだろうか、と……。