『一人じゃない』それは本当に心強い言葉だ。
特に幸助みたいな小さな子には……。

本来なら塾長である僕が言ってあげるべき言葉だったのに……。
情けないが、僕自身がその言葉を言って欲しいと思っているのだからどうしようもない。

「あのな、大人だって孤独を感じることはある。いや大人だからこそ、もっと闇は深く濃い」

僕の心を読んだかのように叔父が言う。

「家族の中にいても、友達の中にいても、何かの拍子に真っ暗なブラックホールに弾き飛ばされる」

そのくちぶりに、どうやら叔父もお仲間のようだと思う。

「ブラックホールって怖いんだぞ! 帰って来れないんだぞ!」

幸助が両手を頬に添え、ムンクの叫び顔になる。
SF小説に嵌っているからこその言葉だろう。

「ああ、だからこそ、そこから抜け出るために『愛』を欲するんだ」

叔父はトヨ子ちゃんの愛を欲している。

「愛って強いのか!」

幸助が興奮気味に訊ねる。

「ああ、最強だ!」
「だったら、俺、それ探す」

ハハハと叔父が明るく笑う。

「幸助、探さなくても、お前はもうそれを持ってるよ。それをゆっくり育てればいいだけだ」