「それを言うなら僕より先に叔父さんだろ!」

「そうだった」と恵が今度は運転席に乗り出す。

「早くトヨ子ちゃんにプロポーズしましょう!」

恵の言葉にハンドルが揺れる。

「うわっ! 恵、止めろ、死にたくない!」
「そうだ、結婚式の前に葬式なんてまっぴら御免だ!」

叔父も叫ぶ。
そうだ、命あっての家族団欒だ!

ギャイギャイ騒がしい車中で、何だかサザエさん一家みたいだな、とちょっと思う僕がいる。

横を見ると叔父もそう思ったのか口角が上がっている。

「家族かぁ……」

叔父の呟きに幸助も恵も車窓の外に目を向ける。

「俺達はサザエさん一家みたいに血の繋がった家族じゃないが、家族みたいなもんだ」

「だろ?」と叔父はバックミラーに向かってウインクする。

「だから、何かあったら独りで悩まないで遠慮せず相談するんだぞ。なっ、幸助!」

どうやら今回の喧嘩の件を言っているようだ。それが分かったのか、幸助は口を尖らせ、頷く。

「分かったよ。もう、塾はボイコットしない」
「約束だぞ」
「うん」

大きく頷く幸助の顔が虹のように輝く。