僕と家族と逃げ込み家

「で、どうなの?」

母の睨みを利かせた眼が必要に僕を追い詰める。
――負けた! 仕方なく浮かせた腰をもう一度ソファに下ろす。

「そうよ、それでいいの」

満足そうに頷くと、まず、いつものように愚痴が始まる。

「聞いて! 本当はね美少年を出したかったの」

――またか……。

「なのに、編集さんが『月並みですし』て却下するのよ! だいたい美少年が出ない話って書く気しないじゃない?」

憂いを秘めた瞳で宙を見上げると一つ悲しげな溜息を吐く。

僕にそんな同情を求める顔をしても無駄だ。嫌でも何でも書かざるを得ない。それが仕事だろう、と怒鳴りたいのをグッと我慢する。

「だからね、原稿が上がらないの!」

だから、それは自分が書かないからだ。

「分かるでしょう?」

いいや、全く分からないと心で呟いた途端、母が勢い良くテーブルをダンと叩く。
だが、痛かったのだろう。涙目で両手にフーフー息を吹きかけている。

――まるでギャグだ。

あまりのバカバカしさに、「ふーん」と気のない返事をしながら、よくもまぁ、そんなムチャムチャな言い訳を毎度考えられるよなぁと呆れる。

母はこんなふうに原稿に行き詰まると、とんでもないところに責任を転換して現実逃避する――という本当に大人気ない人だ。