「若者が何を情けないこと言ってるんだよ」
「叔父さんも、アレに乗れば分かるよ」

指を差した先を見た途端、叔父はそそくさと話題を変える。

「さぁ、食べようじゃないか!」

白々しい笑みを浮かべながら叔父がバスケットをテーブルに置く。

「キャッホー、ご飯ご飯」

おしぼりで手を拭き終わると、幸助が早速バスケットを開ける。

「きゃぁぁぁ! 喜子さんの三段重ぅぅぅ」

恵が蓋を開けると、「うわぁ、唐揚げと卵焼きとソーセージだぁ」と幸助が嬉々と声を上げる。

一の重には、お子から大人まで大好きな基本メニュー&野菜の肉巻き、ほうれん草のバター炒めなど、しっかり野菜も取れるおかずが入っていた。

流石『お福』の女将さんだ。

「きゃぁぁぁ、おにぎらず!」

二の重は……おにぎらず? サンドイッチだが、これはご飯だ。

「この酢飯のサンドイッチが、おにぎらず?」
「そうよ。握らないおにぎりのことをそう言うの。具は何でもOKよ」

僕の問いに恵が物知り顔で答える。
今日の具は、明太子、トンカツ、金平ごぼう、鶏そぼろ、ツナマヨ……等々。

「おっ、こっちは、伝統的な三角おにぎり、梅干しあるよな?」

三の重を見ながら叔父がホッと息を吐く。

「あるよ。母ちゃんの梅干し握り好きだもん。あっ、あとの半分は俺のキツネ寿司だからな」

幸助はそう言うと、早速それを手に取り口に入れる。
おにぎらずかぁ、と僕は胃を押えつつ明太子のそれを手に取り、少し齧る。

「美味っ!」

サッパリとした酢飯が、暴れていた胃を落ち着かせる。
もう、喜子さんって神かよ!