「ねぇ、叔父さん、僕にもギター教えてよ」

カーステレオから流れる軽快なジャズの調べに、ピピッとフラグが立つ。
もしかしたら、楽器が弾けるってモテポイントが高いんじゃないかと思ったからだ。

あいつらを見返せるかも……ニヤリと笑みを浮かべていると、隣から叔父の視線を感じチラリと見る。

ゲッ、何だ、そのニヤリ返し。

「お前、今、厭らしいこと考えてただろう? そんなんじゃギター弾けてもモテないぞ」

チッ、どうして分かったんだ? だったらピアノでもいいかもと後ろを見る。

「私は受験生だから教えません!」

剣のある物言いで即答されたうえ、ギッと睨まれる。

「お前、バッカだなぁ。不純な動機を持つ奴に恵ちゃんが教えてくれるわけないじゃないか」

それもそうかと思っていると、「モテるモテないは別として、幸助と一緒に教えてやるよ」と叔父が言う。だが、間髪入れず恵が「そんな不純な動機の人に教えなくいい!」とピシャリと言う。

「恵、お前、いつもいつも厳しいな!」
「お前だけにな」

叔父がニヤニヤする。

「守さん、お口チャック!」

ホーイと叔父は返事をして素直に運転に集中する。
どういうことだ?

叔父と恵の不思議な会話を疑問に思いつつ、視線を車窓の外に向ける。

「あっ、ここ」

見慣れた風景が飛んで行く。
もうすぐだ。早めに出てきただけある。渋滞に引っ掛かることなく到着しそうだ。