その割には出てきた恵の顔は憮然としていた。

「で、何の用? 謝りにきたってこと?」

何て生意気なんだ! その言い方にカチンときたが、グッと我慢して大人の対応をする。

「――悪かった」
「ふーん」

何だ、ふーんって! いや我慢だ、我慢。

「だから……」えっと、何で怒らせたんだ?
心配してくれたのに、その厚意を踏みにじったから? イマイチ分からん! が……。

「とにかく、ごめん」
「とにかく……ねぇぇ」

メチャ上から目線。クソッ!

「まっ、真理さんに頼まれたから許してあげる。その代わり」

恵がニヤリと笑う。背筋がゾワゾワする。悪い予感。

「ドリーのパフェを奢って」

やっぱりな。まっ、でも、ドリーのパフェなら僕も食べたい。

「ああ、分かった」
「それから……」

えっ、まだ、あるのか!

「そんなに私のことが心配なら、私の家庭教師をして」
「はぁぁぁ!」

思わず声に出してしまった。

「何よ、心配だから、あんなこと言ったんでしょう!」

あんなことって、『僕のことは心配しないで、受験勉強に取り組んでくれたまえ』ってあれか?

あれは、そういう意味じゃない!
――と言えばまた怒らせそうなので黙っておく。