僕と家族と逃げ込み家

その途端、ゴボッと変な音がして、いきなり息苦しさがなくなった。

「ゲホッ! ゴホッ!」と咳き込み、ハーハーと犬のように舌を出しながら小刻みな呼吸を繰り返す。まるで、生まれたての赤ん坊だ。

『オンギャー』と泣き声を発して初めて肺呼吸をした時、『そうか、呼吸ってこうするのか。酸素って何て美味しいんだろう!』って思うんだろうな……なんてことを考えながら、妙な感慨を覚え、少し涙ぐむ。

――が、すぐに現実に戻る。

こんにゃろぉー! 鼻息も荒々しく死の淵に追い込んだ元凶を睨み付ける……が、決して大福を睨んだわけではない。睨み付けたのは、母。

だから、近くにいたくないんだ!
母は僕の睨みにも気付かず音読を続けている。

怒りに任せて残りの苺大福を無理矢理口に突っ込んで、今度は用心深くよく噛みながら立ち上がる。

しかし、その途端、飛んでくる声。

「ねえ、春太ぁ、どぉ? 今の書き出し」

黒縁眼鏡の奥から鋭い視線が『逃がさないわよ!』と言う。

「感想は?」

『どお?』って、どうもこうもない! R18指定の小説を、まだ十六歳の我が子に聞かせて感想を求める……という行為に「どお!」と言いたい!