僕と家族と逃げ込み家

「へー、喧嘩ねぇ」

珍しいこともあるもんだ。

早生まれで末っ子長男の甘えた健太は、一人っ子長男の俺様幸助と誕生日が数か月しか違わない。健太の方が学年は一つ上でも、幸助の方が明らかにしっかりしていて立場は上に感じる。でも、こんな二人だが仲はいい。

まぁ、何があったにせよ、時には喧嘩もいいだろうとその件には触れないことにして、二人を放っておくことにした。

そこに機嫌良く現れたのは天敵の恵だ。

「あっ、茜ちゃん、来てたの?」
「はい。塾のお手伝いをしています。恵ちゃんは?」

「私?」チロッと僕の方を見ると、フフンと鼻を鳴らしながらまな板のような胸を反らした。

「私は、真理さんから春太のことを頼まれたの」

「はい?」どういうことだ?

「今日から真理さんとトヨ子ちゃん、沖縄なの。で、春太が羽目を外さないよう見張っていてねって頼まれちゃったわけ」

何だと! あの、お気楽エロ作家!
寄りにも寄ってこいつに何てことを頼むんだ!

「お前、それ、タダじゃないだろ」

ピンと閃いたことを言ってみる。そして、案の定だった。

「あらっ、よく分かったわね。お土産に琉球ガラスのグラスを頼んだの。メチャ爽やか系なもの! それでこの夏を乗り切るの!」

ああ、こいつ受験生だったと思い出す。

目指している高校は教えてくれないが、かなりレベルの高いところらしい。
こいつの頭でそんなところが受かるのか、と本人が聞いたらビンタものだろうことを思う。