「凄いですね。本格的なピザ釜ですよ、これ」

歓喜の声を上げたのはトヨ子ちゃんだ。

別荘の前庭には赤レンガで作った立派なバーベキューコーナーがある。トヨ子ちゃんはその横に鎮座するピザ釜に目を輝かせていた。

「岡崎さんから聞いていたのでピザ生地を持参しました」

叔父が優しい眼差しでトヨ子ちゃんを見る。
僕に対するのとは違い、若干、言葉も丁寧だ。

「守さん、グレート! 流石です」

トヨ子ちゃんに褒められ、叔父のテンションが上がる。
あーあっ、これを『豚もおだてりゃ木に登る』っていうんだろうな。

落っこちなきゃいいけど……と思いながら、叔父の愛が報われるのはいつのことだろうと思う。

可哀想だけど一生こないだろうな、と思う僕の横で叔父は張り切った。

出来上がったピザは、シーフードとベーコンエッグの二枚。どちらも超ビッグで、どちらも超美味だった!

そして……岡崎母よ、ありがとう!

肉屋から届けられたのは霜降りのサーロイン、骨付きカルビ、ホルモンに至るまで、全て超極上だった。

口の中に入れただけで蕩ける肉って……本当にあるんだ。
一瞬でもグルメレポーターを疑ったことを心の中で詫びた。

食の細い亮でさえ、「美味しい」とたくさん食べていた。
そして、その横では、幸助が大きなお握りを頬張りながら、自慢気に言う。

「母ちゃんのお握りは、外で食べる方が美味いんだぞ!」
「バカね、それを言うなら、外で食べるともっと美味しい! でしょう」

恵と幸助の漫才が始まり笑いが起こる。

そうだ、『何を食べるか』より『誰とどこで食べるか』で、同じ物でも美味しさが違ってくる。

こんなふうに自然豊かな美しい景色の中で、気の合う人たちと一緒に食べる。それがより美味しく感じさせるんだ。

「恵はいいこと言うな、流石は我が娘」

逢沢さんがホクホク顔で恵の頭を撫でる。

「パパ、子どもじゃないんだから、それ止めてって言っているでしょう!」

恵がブルブルと頭を振る。

「中学三年生ならまだ十分子どもだ。いや! お前は一生私の子どもだ」

そりゃそうだが、子どもからしてみれば、そういうのが鬱陶しいんだよなぁと思っていると……。