僕と家族と逃げ込み家

「こら、幸助!」

何て失礼なことを言うんだ。メッと幸助を叱ると、逢沢さんが「まぁまぁ」と僕を宥め、思いがけない言葉を幸助に告げた。

「だったら、幾らで譲ってもらえるかな?」

「えっ」と目をまん丸にする僕の横で幸助がニヤリと笑う。

「百八十円。俺、ハンバーグとエビフライのセットが食べたいんだ。でも母ちゃんがハンバーグセットのお金しかくれなかったんだ」

幸助も春休みは岡崎姉弟に合わせてここでランチを取っていた。
逢沢さんがニヤリと笑い返す。

「君はまだまだ交渉下手だね。こういう時は『一週間、ご飯奢ってくれたら使っていいよ』ぐらい言わなきゃ」

思わぬ言葉に、今度は幸助も目を見開き口をアングリ開ける。

「交渉っていうのは強気な奴が勝つ」

そんなものなのか、と思っている向こうで叔父も何気に頷いている。

「君の言葉も君が考えたアイディアも、全部君のものだ。だから、安売りをするな」

逢沢さんは本当にいい人だ。
こんなふうに、子どもにも対等に話をしてくれる。

まぁ、時々難解すぎて子どもたちがキョトンとする時もあるけど、それでも彼等の学びになっていると思う。ついでに僕にも。

「まぁ、よく覚えておくんだね。大きくなるとそんな場面の繰り返しだから」

幸助は「ふーん」と鼻を鳴らしながら、「ラッキー! 一週間も飯奢って貰える」と嬉々とする。

こいつ、きっと逢沢さんの言っていること全然分かっていないな。