「今日は静かだな。春休みだからチビたち来ないのか?」
コーヒーを啜りながら逢沢さんがホールの端を見る。
そこは観葉植物に仕切られた『デッドスペース』と呼んでいる場所だ。
「もうすぐ来ると思いますよ。春休みだからって親は休みじゃないですからね」
『逃げ込み家』のそのデッドスペースを、僕は『塾』として使用している。
塾と言ってもガチガチの学習塾ではない。
どちらかと言えば、子どもの『居場所』的な場所だと思っている。
学校にも、放課後に設けられたアフタースクールのサービスはある。
……でも、そこが居心地悪い子もいる。
塾ができたきっかけ――それはマンションが建って少し経ったときのことだ。
常連さんの一人がどこから聞きつけたのか、僕が首席で濱永高校へ入学したことを知り、『勉強を、というよりベビーシッターならぬ児童シッターをしてくれないだろうか』と頼んできた。
その常連さんは共稼ぎで二人の子を持つ。その姉弟の弟の方が気弱で、『放課後まで学校にいるのが厭だと駄々をこね、グジグジ泣くんだ』と困った顔で言った。
我が儘だけならそのまま通わせるつもりだったらしいが、どうやらそうではなく、その中にイジメっ子グループがいたらしい。
このままでは不登校になるかもと危惧した常連さんは、いろいろと当たったようだが妥当なところがなかったらしい。
『いいんじゃない。店の端にスペースを設けてやるから、そこでみてやったら? お前が来れない時は……誰か彼か面倒をみてくれるだろ』
そんな叔父の無責任にも聞こえる発言で、あのデッドスペースが塾になった。
最初はその常連さんの子、姉弟二人だけだったが、それが三人になり四人になった。でも、その中の一人はこの春中学生になるので卒業だ。
僕はウエイターをしながら、その子たちの面倒を見ているというわけだ。
コーヒーを啜りながら逢沢さんがホールの端を見る。
そこは観葉植物に仕切られた『デッドスペース』と呼んでいる場所だ。
「もうすぐ来ると思いますよ。春休みだからって親は休みじゃないですからね」
『逃げ込み家』のそのデッドスペースを、僕は『塾』として使用している。
塾と言ってもガチガチの学習塾ではない。
どちらかと言えば、子どもの『居場所』的な場所だと思っている。
学校にも、放課後に設けられたアフタースクールのサービスはある。
……でも、そこが居心地悪い子もいる。
塾ができたきっかけ――それはマンションが建って少し経ったときのことだ。
常連さんの一人がどこから聞きつけたのか、僕が首席で濱永高校へ入学したことを知り、『勉強を、というよりベビーシッターならぬ児童シッターをしてくれないだろうか』と頼んできた。
その常連さんは共稼ぎで二人の子を持つ。その姉弟の弟の方が気弱で、『放課後まで学校にいるのが厭だと駄々をこね、グジグジ泣くんだ』と困った顔で言った。
我が儘だけならそのまま通わせるつもりだったらしいが、どうやらそうではなく、その中にイジメっ子グループがいたらしい。
このままでは不登校になるかもと危惧した常連さんは、いろいろと当たったようだが妥当なところがなかったらしい。
『いいんじゃない。店の端にスペースを設けてやるから、そこでみてやったら? お前が来れない時は……誰か彼か面倒をみてくれるだろ』
そんな叔父の無責任にも聞こえる発言で、あのデッドスペースが塾になった。
最初はその常連さんの子、姉弟二人だけだったが、それが三人になり四人になった。でも、その中の一人はこの春中学生になるので卒業だ。
僕はウエイターをしながら、その子たちの面倒を見ているというわけだ。


