何言ってんだよ! 心の声を聞き取ったのか、トヨ子ちゃんはチラッと僕を見るとニッコリ笑む。

「春太君に責任はありません!」

毅然とした態度、冷静な声。
カッコイイ! 男前! 思わず拍手をしそうになる。

「今日の午後ですよ。締め切り!」

トヨ子ちゃんは、母の前に仁王立ちになると眉を吊り上げる。
美人が怖い顔をすると、とてつもなく怖いと僕はこの顔を見るたびに思う。

「だって、春太の感想はないし、イケメンじゃないし、トヨ子ちゃんは来ないし……」

グダグダと言い訳を言ってはいるが、その声がだんだん小さくなっていく。

「とにかく、できたところまででいいです。見せて下さい」

母がパソコンを指差す。

「まったく!」

眉を吊り上げたまま、トヨ子ちゃんはそれを前に椅子にドカリと座る。

「コーヒー淹れて下さい」
「はぁい」

トヨ子ちゃんの注文に、母はいそいそとコーヒー豆を挽き出す。
どっちが助手か分かんないけど、母はコーヒーだけは不思議と上手に淹れる。

鼻歌を歌いながら上機嫌に準備している母にトヨ子ちゃんが言う。