「母さんが行っちゃう! 母さんと離れたくない! 独りぼっちは嫌だぁぁ!」

最後に発した叫び……それは亮の素直な気持……やっと聞けた。

「……亮」

震える声が亮を呼ぶ。明穂さんだ。

その声に亮はビクッと身体を強張らせながらゆっくり声の方に顔を向ける。

「――母さん……」
「――ごめんね、亮。ありがとう……ありがとう、亮」

何度も何度も繰り返し亮の名を呼び、明穂さんが亮に駆け寄る。

「……母……さん」

強く抱き締める明穂さんの腕の中で、亮が大声を上げて泣き出した。
感動的なシーンだ。

思わず貰い泣きしそうになっているというのに……何だこの人は!
いつの間にか傍らに立っていた母が、意味不明の言葉を吐く。

「やっぱり、私って最高!」

なぜこのタイミングで自分を褒める?

「春太、あんたは最高の息子よ」

それなら分かる。

「でもあんたを生んだのは私。ハッピーバースデー」

これはもしや……誕生日に、親に感謝しよう『生んでくれてありがとう』っていう、あれか?

そう言えば、この間のあのテレビドラマで……そんな台詞を言っていた。

母よ、間違っているぞ!
あれは、子供が親に言う台詞だ。自分で言うと有り難味も何もない!

涙も引っ込み、全身の力が一気に抜ける。