真っ白なベッドに横たわり点滴に繋がれた亮は、いつもの数倍も数十倍も小さく見えた。

「食べられるようになるまで、しばらく入院みたい」

母の言葉に小さく頷き、亮の側に寄る。
さっきまでいた喜子さんは入院の準備に帰ったらしい。

「……亮」

声を掛けると虚ろな瞳が僕を見る。
傍らにあるパイプ椅子に腰を掛け亮の頭を撫でる。

「しんどいか?」

ううん、と亮が首を横に振る。やっぱり疑問形はダメだなと言い直す。

「お前は辛いんだ!」

我慢しっぱなしの心は鈍感になる。
だから、教えてやらなきゃ。

「前も言ったけど、泣け! 甘えろ!」

僕の思いが伝わったのか……亮の瞳にドンドン涙が溜まり、流れる涙が枕に大きなシミを作る。

亮の母親が女医先生との話を終え、戻ってきたようだ。
ドアの近くに母と佇む。でも、亮からは見えない。

「……あのね……母さんが憎いのに……」

ポツリポツリ、亮が話し出す。

「母さんに会いたくて……」

一言ずつ言葉を発し……。

「でも、アメリカは遠くて」

心を開放していく。

「先生も皆もいないし……」

その後は言葉にならなかった。声を上げ泣きじゃくる亮は初めて見る子供らしい亮だった。