応えられない……。

亮のような思いを抱いたことがないからだ。
そんな問題にブチ当たったことがないからだ。

そう思うと……今まで経験してきたことがどんなに甘ちゃんだったか思い知る。
でも……これだけは分かる。

「亮、どうすればいいかは自分で考えなければ答えにならないと思う」

突き放した言い方かもしれない、でも、それは本当のことだ。

「もし、誰れかから答えを貰ったとしても、遅かれ早かれきっと自分の意見が出てくるはずだ」

亮が澄んだ瞳で僕を真摯に見つめる。

「その時、貰った答えと自分の答えが違ったら、また、そこで悩まなければいけない。それこそ本末転倒だ」

小学五年生には難しい単語かもしれないが、僕は敢えてその言葉を使う。

「だから亮、苦しいかもしれないけど、時間は掛かるかもしれないけど……自分で考えろ」

亮は視線をそのままにジッと何か考えているようだ。

「でも、お前は一人じゃない。いつでも、こんなふうに話し相手になってやる。分かったか?」