お茶二本とポテトチップ、それから唐揚げを買って店を出る。

有線だろう。コンビニで流れていたアップテンポな曲が外のスピーカーを通して聞こえる。それをバックミュージックに小さな子供の甲高い声や女性の笑い声が聞こえる。

商店街はいつものように明るく賑やかだ。でも……亮の方に目を向けると、空洞のような瞳が、さっきと同じように空を見上げていた。

無の世界が亮を包んでいる。
そう思った途端、僕の周りからも喧騒が消え去り、背筋が凍る。

ダメだ! 行くな!

亮を捕まえなければ! どうしてだろう切羽詰まった思いがわき上がり、亮に駆け寄るとビニール袋をテーブルに放り置き、両手でギュッと亮を抱き締めた。

「……先生?」

言葉が出ない。

「先生、どうしたの? 痛いよ」

「……亮、アメリカに行きたくなかったら行かなくていい。母さんに言って僕の弟にしてやる」

これじゃあ、幸助と一緒だ。何かもうメチャクチャだけど、あの姿があまりに小さく儚げで……何処かに消えてしまいそうで……言わずにいられなかった。

「――先生、ありがとう」

亮がクシャッと顔を綻ばす。

「これ、何をいっぱい買ってきたの?」

手を伸ばし、買い物袋を指す。

「あっ! ポテトチップスと唐揚げ。それからお茶だ」

「遠慮しないで食べろ」と言ってポテトチップスの袋を破るが、勢い余って中身が飛び散る。何やってんだかだ。