亮も僕も、どちらかと言えば無口だ。

だから、一緒に歩いているが、何の会話もない。でも苦痛じゃない。それが自然体だからだ。

コンビニの前でようやく僕は口を開く。

「アイス食べよう!」

亮には「食べるか?」と疑問形で聞かない。
「ううん」と返事が返ってくるのを知っているからだ。

店に入り、僕は抹茶小豆のかき氷、亮はイチゴのかき氷を買う。
二人で店の外の椅子に座り、それを頬張る。

キンとこめかみに激痛が走る。顔を顰めながらそをグリグリしていると、亮が久し振り笑った。

「先生……ありがとう」

何の『ありがとう』だろうと思っていると、突然、亮の瞳からポタポタと涙が零れ落ちる。

葬儀の日、亮は泣かなかった。
グッと何かを堪えるように奥歯を噛み締め耐えていた。

ああ、と今更だが分かる。
明穂さん……母親がいたからだ。

零れる涙は止まることを知らないように、次から次へと溢れ流れる。
そう言えば……父さんが亡くなった時、母さんが……。

『どんどん泣きなさい! 涙と共に胸にある悲しみを流してしまいなさい……』

そんな風なことを言ったような……でも、締め括りの言葉が……。

『そして、明日から明るく元気に、立て! 立つんだ、春太!』

漫画をもじったような台詞だったような……。
そうだ、我慢することなんてない。泣きたい時には泣けばいい。

僕は亮の邪魔をしないように、何も言わず、ただ背中を撫で寄り沿う。
亮が顔を上げた時、一人ぼっちだと思わないように。