通路をキョロキョロ見渡しながら、亮はどこに行ったのだろうと探していると……いた!

こんなところに何の用だ?
そこは《趣味・教養》のプレートがぶら下がる通路だった。

物陰に隠れながら亮を探る。亮はテレビや映画関係の本が並ぶコーナーに立っていた。そして、そこから一冊の本を取り出して手にする。

もしかしたら……。
遠目でハッキリとは見えないが、チラ見えする表紙に『特殊メイク』の文字。

やっぱりだ。本には『著書 小笠原明穂』が踊っていた。
亮の母親の本だ。

一心不乱にページをめくる亮。
だが、数ページめくるとパタンと閉じてしまった。

その表情は、悲しそうにも……苦しそうにも……とにかく見ているこっちが辛くなるような顔だった。

一人にしてはおけない!
そう思うと足が勝手に動いた。

「亮、何をやっているんだ?」

できるだけ明るく声を掛ける。
亮はハッと顔を上げると、慌てて本を元に戻す。

「……先生」

真っ赤な目が僕を見る。
それに気付かない振りをする。

「何か買うのか?」
「あっ、ううん」
「じゃあ、一緒に帰ろうっか」

亮の頭に手を置きポンポンと軽く叩く。