あれから亮は喜子さんのところにいる。
亮の母親だという人は、葬儀が済んだ後、一旦アメリカに戻った。

「急に亡くなったから……彼女もいろいろ事情があるのよ」

まただ……大人の事情なんか、クソ食らえだ!

「俺、このまま亮と暮らして兄弟になるんだぁ。亮なら『兄ちゃん』って呼べる」

この状況の中、幸助のKY発言は救いだった。

「亮ならって、僕はダメってこと?」

健太が膨れる。
二人のやり取りを亮はいつものように黙って聞いている。

「うんとねぇ、二胡……幸助の妹になる!」

二胡も参戦するが、なぜか幸助は渋い顔をする。

「うーん、二胡は妹になれない」

「どうして?」と途端に涙ぐむ二胡。

「おい、こら、泣くな! その代り、二胡の着たがっていた白いドレスを着せてやる」

「えっ!」と二胡がまん丸い目で幸助を見る。

「お姫様のドレス?」
「うん。母ちゃんが、あれはお嫁さんが着る服って言ってた」
「お嫁さんは妹になれないよ」

健太が口を挟む。

「じゃあ、二胡、幸助のお嫁さんになる」

何だこの展開! 婚約成立?

「あっ、じゃあ、亮は俺と二胡、二人の兄ちゃんになるんだ!」

それに、いつの間にか家族ができ上がっている。

「エーッ、そんなのズルイ! 僕は?」

健太が頬を膨らませ、いじける。

「うーん」と幸助は真剣に考えているようだ。そして、何か閃いたのかパンと手を叩く。