僕と家族と逃げ込み家

『でね、次の仕事ももらったの』

母の言葉にミラクルだと思った。

『すごい、すごいよ、母さん。あんたは天才だ!』

鉛色の雲の隙間から一筋の光が降りてきたように感じた。

――今思えば、その褒めちぎり行為が間違いの元だった。
我が身にとって『てんさい』とは『天才』でなく『天災』だったのだ。

まさか小説の内容があんなドギツイとは……。
明るい未来は呆気なくブラックホール化したのだった。



「――でもさあ……」

今度はちょっと控え目に、反論を始める。

「でもさあって、何よ!」
「あのね、僕も世間で言うところのお年頃なんだよね」

思春期はとうに始まっているから、今更だが……。

「母さんの小説を聞いてどうなると思う?」

その言葉に母がピクリと反応を示す。

「ちょっと、春太、どうなっちゃうの?」

ゲッ! そんなの言えるかよ!
だが、僕の意に反して興味津々の顔が迫ってくる。