亮たちが何を話しているのか分からないが……亮の表情はずっと固いままだった。

「彼女、十代で亮君を産んだらしいわ……未婚で」

未婚の母……その衝撃的な事実に驚愕するが、同時に湧き上がる疑問。

「どうして、一緒に暮らさないんだ?」

「詳しくは知らないけど、源さんが許さなかったみたい。『稼ぎの無い奴に親の資格はない。子供は育てられない』って、家から追い出しちゃったみたい」

源さんらしいと言えば源さんらしいが……。

「それから彼女はアメリカに渡って、夢だった特殊メイクの勉強をしたんですって」

特殊メイク? 思い浮かんだのはドロドロしい血みどろのゾンビの姿。

「拠点はハリウッドらしいけど、最近は日本でも活躍しているのよ」

そう言って母が挙げた幾つかの作品は、誰もが知っている有名な映画やテレビのドラマだった。

「なら、もう十分稼いでるじゃないか?」

なのに、なぜ亮を放っておくんだ?

「大人の事情っていうやつじゃない? いろいろあるのよ」

大人はそれでいいだろうが、子供の思いはどうなる?
今回だって、突然現れて……。

亮と明穂さんに視線を移す。
無性に腹が立ってきた。