僕と家族と逃げ込み家

「春太、明後日から夏休みだぞ。何して遊ぶ？　俺、二胡とプールに行くんだ」

目の前に到着した途端、キラキラと瞳を輝かせながら幸助が訊ねる。
楽しそうだったのは、二胡とその話をしていたからだろう。

「プールかぁ、いいなぁ」

ギラギラと容赦なく照り付ける太陽を見ながら本気でそう思う。

「じゃあ、春太も一緒に連れて行ってやるよ。いいよな？　二胡」

お伺いを立てるとは、もう尻に敷かれているようだ。思わず笑ってしまう。
二胡がコクリと頷くと、横から健太が「僕も僕も！」とアピールする。

「うん、健太も亮も一緒だ！」

その時だ。「やーい、ダンマリ！　ブス子、お前の母さん出ーベソ！」と例の二人組が言い逃げる。

全く！　逃げるのなら言うなと怒り心頭になるが、フト思う。
あいつ等ももしかしたら二胡のことが好き？

「出ベソはお前の方だ！」

健太が両手で拡声器を作り、大声で反論する。
固い表情の二胡の頭を幸助が優しく撫でる。

「二胡はブス子じゃないぞ。お姫様みたいに可愛いぞ」