僕と家族と逃げ込み家

天変地異とはこのことだと思った。

『百万円貰えるのよ』
『ひゃ、百万……!』

僕は口をアングリと開けたまま、母を見つめた。
そして、おもむろに自分の頬を抓ったら痛かった。

奇跡もここまでくると神業だと心から思った。そして、口角を上げニッと笑む母の間抜け面を見つめつつ……人は見掛けに寄らぬものだとしみじみ思った。

母は本当に何もできない人だ。社会人云々以前に、家庭人失格だ。
掃除・洗濯・食事作り、自慢じゃないけど、全部ヘタ! ヘタを通り越して、迷惑だ!

尻拭いは、全て僕。
父が生きていた時は父がセッセと拭っていた。

人付き合いも苦手で、どちらかと言えば引きこもりの内弁慶。
本当に守られて生きてきた人だ。

だから悩んだ末、大学は諦めて働こうと心に決めた。
まさに気持ちは、暗黒街に立ち向かう勇者だった。

それが突然、霧が晴れたように視界がクリアになり、眩しい光が現れた。
母にもできることがあったんだと無性に嬉しかった。

思わず、『いやぁぁぁ、よかったよかった!』と母の両手を握り締めブルンブルン振った。