僕と家族と逃げ込み家

トヨ子ちゃんは、募金箱を手にしてズラリと並ぶボーイスカウト三十人全員の箱に五百円ずつ募金していったのだ。

あの後、どうしてそんなことをしたのか聞いて驚いた。
トヨ子ちゃんのボランティア精神は本物で徹底していたからだ。

『特別なことは何もしていません。いつもです』

トヨ子ちゃんはキッパリそう言い切った。

『同じように街頭に立っているのに、一つの箱だけに入れたら不公平だと思っているので。だから、並んでいる全部の募金箱に入れるようにしています。でも、お金の持ち合わせがない時は募金は一切しません」

竹を割ったような性格……叔父とは真逆だ。だから上手くいったのかもしれない。

まぁ、とにかくボランティア精神でも何でもまとまってよかった!
それに、そう言いながらも二人が交わす視線は愛情が溢れていた。

幸せそうで何よりだとほのぼのしていると……母がニヤリと笑い携帯を手にした。

「もしもし、婚約大宴会決行です!」

ギョッと六つの目が母を見る。

「あらっ、今夜? もうですかぁ?」

ちょとちょっと、誰と話しているんだ?

「了解しました。では、後ほど」

ピッとパネルをタッチして電話を終了すると、「あぁ、忙しい忙しい」とカードキーを取り返し、母は叔父の部屋を出て行ってしまった。

――今のは何だったんだ?