「天と地の差だな。あの顔」

叔父がカウンター越しに言う。

「勇者幸助のお陰です」

あれ以来、二胡はよく笑い、言葉数も増えた。そして、何より幸助にベッタリだ。

幸助の方もまんざらじゃなさそうだ。いやどちらかというと、『二胡を守る!』という使命に燃えているようだ。

「俺様ガキ大将が、俺様ボディーガードに昇格したからか? あいつも逞しく見えないか?」

全くだ。思い切り小学三年生に負けている感がある。
そして、笹口と美山も……。

「哲君、このアイスも食べる?」
「アイスより、そっちの白玉の方が好みだ!」

――と以前に戻った。

あの日あのあと、笹口は美山に会いに行き、「お前は俺の大切な親友だろう? なのに、何を隠しているんだ!」と思い切り美山を怒鳴ったらしい。

そして、判明した事実は……例の三人組は他校の不良たちで、奴等は言ったそうだ。

『おい、美形さん。お前、笹口と付き合っているのか? なら、俺達とも付き合えるよな?』

――付き合うとは、エロ小説みたいな内容を指すらしい。
不良ども、何を考えているんだ!

でも、奴等は美山がトランスジェンダーとは思ってもいなかったようだ。ただただ性を超越した美山の美に魅せられトチ狂ったみたいだ。思春期の好奇心? まぁ、分からなくもないが……。