僕と家族と逃げ込み家

「何をぉ!」と一年生が拳を振り上げた時。二胡が幸助のシャツを引っ張る。そして、指差す。僕を……。

――おっと、バレてたんだ。

「先生!」と幸助が僕を呼ぶ。
これには一年生もギョッとしたみたいだ。

「おっ、幸助、二胡、今、帰りか?」

そりゃ、そうだろう。彼等から見れば高校生だって大人だ。その大人が近付いてきたんだからな。

「覚えてるよ!」と負け犬の常套句を残して二人は走り去った。

その背に幸助が「おととい来やがれ!」と、これまたサスペンスドラマのワンシーンのような台詞を吐く。

今時のガキって……本当に口が達者だ。
若干一名を除いて……と二胡を見る。

二胡は幸助のシャツを握ったまま、走り去った二人の背中を無表情に見つめている。

――が……よく見ると、シャツを掴む手が僅かに震えている。
幸助もそれに気付いたのか、二胡の頭をヨシヨシと撫でる。

「もう、大丈夫だからな。これからは俺が守ってやるからな」

ひょえぇぇぇ! かなり恥ずかしい台詞だ。思わず赤面する。
でも……と思う。