僕と家族と逃げ込み家

ちょっぴり薄汚れた白いパラソル。だが、ないよりはマシだ。

日陰の出来たガーデンテーブルに、買ったばかりの飲み物と食べ物を置き座る。

「でっ?」

笹口が早速フランクフルトに齧り付き訊ねる。
「隠していたわけじゃないけど」と前置きして、家庭教師の件を話し始める。

話し終えると、笹口と美山が顔を見合せ、ニッと笑む。
この顔、何か良からぬことを考えているな。

「女子と一つ部屋で二人切り……キスしたか?」

案の定だ。笹口のストレートな問いに、奴の後頭部をバシンと一撃する。

「いてぇぇぇ! 何をするんだ! 素朴な疑問だろ」

「恵を相手に、そんなこと考えれるか!」と言いつつフトあの艶やかな唇を思い出す。

「春君、逃がした魚は大きいにならないでね。女の子はアッという間に美しい蝶々に変身して飛んで行っちゃうから」

美山は何を言っているんだ?

「とにかくだ、恵の無謀な挑戦を黙認すべきか、はたまた諦めさせるべきか」
「悩ましいところだな」

「ああ」と炭酸水を飲む。

「恵ちゃんは滑り止めを受けてでも濱永を受験したいんだよね?」

美山が「なら、本人の意思を尊重すべきだと思うよ」と美人顔で微笑む。