面倒だったのはその後で、一部始終を見ていたらしい田辺くんにあれこれ聞かれて大変だったのだ。
この手のタイプは相手にすればするほど酷くなると思った私は、その質問を全てスルーすることで、何とか乗り切ることが出来た。
「お先に失礼します」
「ああ、花ちゃんお疲れ様。また明日ね」
「はい」
図書館を出て居酒屋へと向かう道中、私は今日のことばかり考えていた。
明日も来ると言っていたあの高校生の姿を思い出す。
どうしてそれをわざわざ私に言ったのだろう。
それにどうして私はこんなにも胸が高鳴っているのだろう。
「……っ、」
息苦しい…。
もう何も考えたくは無いのに、彼のことばかり頭に浮かんで離れない。
まるで自分じゃなくなったみたいだ。
薄暗い空を見上げながら溜息をつくと白い息が出る。それに気付きマフラーで顔を隠すと、私はもう一度深く息を吐いた。

