「本当にありがとうございました。おかげでこの通りピンピンしてます」
「……良かった」
さっきまで、自分は何を焦っていたのだろう。きっと田辺くんが変なことを言った所為だ。
漸く落ち着きを取り戻した私は、そこからの業務をすんなり終えることが出来た。
「返却日は来週の火曜日になります」
「はい」
本を受け取った彼に会釈をすると、彼も返してくれた。
当然そのまま帰ると思ったのに、目の前の彼は中々動こうとしなくて。
「……」
「……どうかされましたか?」
「また明日、来ます」
「え?」
「じゃっ」
「あのっ……」
それだけ言うと足早に帰って行く彼。
「……え?」
その後ろ姿を見ながら、私はしばらくの間動けなかった。

