───……え? 「どうかしたんですか?」 「……」 「ああ、なるほど…」 何が成る程なのか分からないが、急に離れていった田辺くんに変な汗をかきそうになる。 訳が分からない。 いい歳してバカみたいだ。 自分を落ち着けさせるために胸に手を当てて深呼吸をする。 その時、左手の薬指にキラリと光る指輪が目に入った。 「……っ、」 いつもは自然と馴染んでいるそれが、その瞬間だけは存在感を発揮した気がした。 今まで感じたことの無いモヤモヤとした感情が私の胸に広がる。 「なにこれ…」