また来ると言っていた彼が再び姿を現したのはそれから一週間後のことだった。
館内に入ってきた彼と目が合い、お互い会釈する。
その手に抱えられていたのはやっぱりあの分厚い本だった。
「なんすか今のアイコンタクト!花さんの知り合いですか?!」
「ちょっと、田辺くんっ。静かにっ」
「あ、すみません。でも、」
「この前来たときに少し話しただけだで、知り合いって程じゃないよ」
「えー本当かなぁ?ただならぬ雰囲気が、」
「そんな訳ないでしょ。あの子高校生だしそもそも私結婚してるんだから」
「でも花さんの旦那さんって…、」
「……」
「っあ、すみませんっ、俺…」
「ううん、いいの。死んでも夫は夫だから」
「……っ、」
「こらっ」
「いってぇ…」
申し訳なさそうな顔をする田辺くんのおでこに私は思い切りデコピンをした。

