分かるはず、ないじゃない。
『心の涙の数』とか、『声の嗚咽』とか。
なんなのよ。
日記を閉じた。
見ていると、頭で理解できないくせに心は覚え
ているとでも言いたいのだろうか。
目頭が熱くなる。
脈拍数が多くなる。
どうしようもなく切ない気持ちになる。
もどかしい。
むず痒い。
今なら、何かできる。とでも言うように今にも
体が動き出しそう。
だけど、行き先が分からない迷子の子の様に。
足先は行く手を定めない。
あたしは、何を______。
何をするべき?なにができる?
自問自答。
問題は難解でこれでもかってくらいに浮かび続
ける。
答の数は1にも満たない。
憶測しか出ないから。
だけど、ひとつだけ。
ひとつだけ、あたしは、知っている。
彼…佐藤君は、全然話したことのない人なんか
じゃなかった。
話したことが、ある。
そして、今日だけじゃない。
あぁやって声を上げたのは。
…話した記憶も、声を上げた記憶も、ないのに
。
なんの根拠もないのに。
だけど、あたしは、佐藤君を知っているんだ。
…佐藤君って、何者なの?
何なのだろう。
瞬きの一瞬と、佐藤君。
今日は、なんだか疲れたな。
だけど、佐藤君、いい人かもな…。
ベットに自分の身を投げ、そのまま目を閉じる
。
まだ明るかったはずなのに、真っ暗になる。
だけどその暗闇に心地よさを覚え、あたしは、
睡魔に身を任せて眠りについた。