だって、そこには文化祭が行われていたはずの

学校が閉まっていたのだから。

よく見たら、違う学校…なんてこともない。

はっと思い出したようにポケットの中を探る。

そしててに当たったそれのボタンを馴れた手つ

きで開く。

高校に入るときにお母さんに買ってもらったケ

ータイ。

そこには楓とお揃いのキーホルダーが1つ、つ

いている。

画面の右上を見て息を飲んだ。

日付が、違った。

なんで?今日は文化祭の日のはず。

なのに、そこにあるのは文化祭から1週間後の

日付があった。

ちょっと、嘘でしょ?

あたし、タイムリープとかなんか、しちゃった

感じ?

まって、なんで?

この状況はいくら頭で考えたところで答えを見

出だせる訳がない事くらい、分かっている。

だけど、考えずにはいられなかった。

だって、あり得ないでしょ?こんなの。

あー、なんか頭痛くなってきた。

「えっとー、水谷?」

急に名前を呼ばれて勢いよく顔を上げた。

するとガンっという音と共に頭に激痛が走る。

「「いったぁー!」」

前を見てみると、顎を押さえてジタバタしてい

る人がいた。

こっちだって痛かったのに!そう思ったけど、

口には出さずに。

「すみません…大丈夫…?」

顔を覗き込んで見ると、見覚えのある男。

たしか…

「佐藤くん?」

佐藤 渡。同じクラスの男子。

あー、もう!!佐藤くんには悪いけど、今はそ

れどころじゃないのに!

佐藤くんより先に立ち上がって、スカートをは

らう。

そこで気がついた。

あれ?あたし、なんで制服なのかな?

さっき日付を見たら、今日は土曜日だった。

文化祭も、土曜日に行われていた。

もしかして、本当にタイムリープとか、しちゃ

ったの!?

「水谷、お前なんでここにいんの?」

ふと上から声がしたと思ったら、いつの間にか

佐藤くんは立ち上がってあたしの目の前にいた。

…って、近い!!

だけど、良く見ると、佐藤くんって綺麗な顔し

てるなぁ…。

さすがモテ男は違うねー!

あたし的には、モテ男は浮気とかすぐしそうだ

から絶対お断りだけどー。

なんて思ってたら急にほっぺを潰された。

「ひゃにふんの!!」

払い除けようとしたけど、男の子は力が強い。

ちょっと!!何なのよ!!

「お前、なんでここにいるのかって聞いてんだ

けど。…暴力女。」

「!?」

なんなの!?それが人にものを聞く態度なの

!?それに、なによ、暴力女って!普通、急に

ほっぺ潰されたら抵抗するでしょ!!

佐藤くんってこんな人だったの!?

「別になんだっていいでしょ!佐藤くんには関

係ないし!それに、佐藤くんこそ何やってるの

よ!」

…あ。

しまった。

あたしは普段、こんなに声を上げることなんて

ない。

絶対、変なやつだって思われた。引かれたよ

ね。

全然話したことない人にこんなに声を上げられ

たら…。

別に、仲良くなろうとか、そんなことは思わな

いけど…ちょっと、悪いことしたかなぁと反省

する。