私は…あの日 黒き雪が降った日

弟を見捨てた。

彼は最後に私に言った


「殺して。僕を殺して」


と。私は…

<2020年 12月30日 >
<雪が降るまであと…10時間>

たくさんの雪が降った。

今日は特に。日本は温暖化で雪が降ることは減ったが久々に沢山降った。

私は弟と庭で遊んだ後、友達と遊びに行くことになったが母の帰りが遅い日だったので弟も連れて行った。

そして私の友達が集合場所に来たので電車に乗って行くことになった。

私は高校1年生だったが、弟はまだ中学一年生だった。友達というのも幼なじみな上に男のもあって弟もすんなり馴染めていた。

電車に乗る前突然にバンッ!という衝撃が街中に走る。

驚いて肩を揺らし振り返るとそこは…

雲一つない快晴だった。

<もう時間はない…雪が降るまであと…10分>

タクト
弟の拓翔は
「うわっ!やんじゃったよ…学校休みになんねぇじゃん」
と悲しそうに言ったが、
ユウキ
私と幼馴染の悠貴は異変に気づいていた。

<あと…5分>

おかしい。

こんな快晴は。

さっきまでの大雪はどこへ行った?

あの衝撃のせいか?

何かがおかしい

まずやむこと自体がおかしいが

それとは違う

全く一言も喋らずに2分が過ぎる
<あと…3分>

「なんだよ?どうしたんだよ姉ちゃんもゆう兄も」
拓翔は心配そうに私たちを見る

「おかしいだろ?流石にお前でもわかんだろ」
と悠貴は拓翔のおでこにデコピンをする

「何か変だよな?なんだ事胸騒ぎは…」
私が言うと2人は気にしすぎと笑って
行くか…と駅のホームに向かった。

<あと…10秒>

「雲だ!」
小さな子供の声に驚いて振り返る。

<あと…9秒>

「おっ!休みになるかな?」
拓翔の一言は驚くほど嬉しそうだった

<あと…8秒>

「ヤスミニナッタライイナ。」
とすごく棒読みで返す悠貴。

<あと…7秒>

そうゆう会話をするふたりが面白くて笑う

<あと…6秒>

2人もつられて笑い出す

<あと…5秒>

何かおかしい。

<あと…4秒>

胸騒ぎがする

<あと…3秒>

空から何かが降ってくる

<あと…2秒>

黒い。
「なんだ?あれ」
私の一言で楽しい時間は終わりを告げる。

<あと…1秒>

目の前にいた普通の女子高生がグワッと黒い謎の物体に変化する

「人間じゃない。逃げろどこでもいいから!!!!」
私の大きい声がホームに鳴り響く

おかげでホームはわー!わー!と大騒ぎだ。

「姉ちゃん?」
拓翔だ。

「リラ?」
悠貴だ。

「逃げろ。私はこいつの正体を…」

そこまで言ったところで私は逃げた。

屋根が溶け始めた。

「無理だあの雪を防げなければ!意味は無い!!!」

「コンクリートは溶けてないよ!」
拓翔の声だ。

「じゃあ地下通路だ!!急ぐぞ!!」
私はこんなに声が出たんだな。

「はぁ!ここだ! 」
息を切らし地下通路に入る
くるっと振り向くと二人ともついてきてくれた。

「それで?何でここじゃなきゃいけないんだ?」
やはり悠貴も息を切らしている

「あの人をバケモノにしたのは、この黒い雪だこれが防げなければ意味は無い」

そう言うと悠貴は大きく目を開けた。

そして
「何秒だ!?」
と聞いてきた。

私は素直に当たってからバケモノになるまでの時間を伝える

「約5秒」

拓翔は突然すごい勢いで外に出る。

「!?拓翔!!!何やってる帰ってこい!」

「姉ちゃん。僕もう当たっちゃった。さっき走ってる時」

「っ!」
驚いて息を呑む

拓翔がだんだん拓翔でなくなっていく。

じわじわと。

「た…拓翔?嘘だろ?」
涙がこぼれる。

「姉ちゃん…」
拓翔の声だ。今すぐ側に行きたい。
でも行ったら私までバケモノになってしまう

「僕…姉ちゃんを傷つけちゃうかもしれないゆう兄のことも。殺しちゃうかもしれない」
拓翔が言っているのに拓翔は言っていない感じがして…

「だからね」


「だから……」

「殺して。僕を殺して。」

「ね?」
途切れ途切れの拓翔の声が…

「おねがい。」
止まってしまった。

はっ!となってうつむいていたのをばっ!と前を向く。

「殺して」
泣きそうになりながら笑う拓翔がいた。


「わかった。ごめんな。私のせいだ。」
私はそう言いながらナイフを探した

案の定そこにはナイフが転がっており私はそれを拾って拓翔の方へ歩いていく

「やめろ!!!!」
という悠貴の声も聞こえたが無視して歩く

「「さようなら」」
わたしと拓翔の声は重なった

私の手に雪は当たっただが私は仕方ないと思っていた

その瞬間だ。

私の体からバケモノが出てきた。

そして………


私のバケモノは

拓翔を吸収した



「殺す!!!!」
私の怒り狂ったような声はバケモノに向いていた

だがこいつを殺せば

拓翔が完全に消えてしまうようで

何も出来なかった