「まいったなあ…」
僕はいま、何故かロッカーに閉じ込められている。
目の前でガタガタ震えている師匠…霊幻さんと共に。
「お、おいぃモブ…!これ、なんとかできねーのかよ……!」
先程から泣きそうになりながらすがり付いてくる、俺の大好きなひと。
恐怖症のせいだとは分かっていても、そろそろ理性が吹っ飛んでしまいそうだ。
「だから、さっきから何度も言ってるでしょう?僕だって開けようとはしてますよ。全力を尽くしてね」
「うぅう……」
そう、何度も何度も解錠を試みた。
けれどこれは霊障。相手の力が予想外に強く働いてしまっていて、こちらからは手も足も出ない。
早く出たいのは山々なんだよクソ幽霊。
一体何が目的なんだ……?
「モブ…っ」
「…怖いなら、そのまましがみついてていいですから。まずは落ち着いてください」
「……あり、がとう」
あぁ、体が、あつい。
密着した空間で感じる師匠の体温と、匂い……気が、おかしくなりそうだ。
そんな事を考えた瞬間、少しお互いの体がずれて。
もうすっかり硬くなったそこを、押し付けてしまったような感触がした。
「…っ、師匠、すみませ……!」
「モブ…?なんで、お前…」
「……さっき、ロッカー入る前…」
媚薬を盛られたみたいです、と伝えると、驚きはしたものの気持ち悪がってはいないようだった。
「…そ、か」
「はい…完全に、僕が油断してたせいです」
「なぁ、そのままじゃ…辛くねぇか」
「へ?」
その台詞に驚きを隠せず思わず師匠の方を見やると、少しは落ち着いたらしく肩の震えが止まっている。
いつもと同じ、とまではいかないが余裕ぶった笑みを浮かべるその顔は何故か紅潮していて。
「…抜いてやるよ、モブ。こんなおっさんでよけりゃあな」