それから、ダンス部の邪魔にならないようにと部活は早めに切り上げられた。
いつも通り部室で騒ぐ部員を尻目にさっさと着替えて、俺は雨の中ひとりで歩いた。
雨だと歩いて帰るのだるいんだよな…
とぼとぼ歩いてると後ろから聞き覚えのある足音がこっちに向かって近付いてきて、かなりのスピードで追い付き俺の目の前に止まる
顔を上げたらびしょ濡れのかこが、ぱんっと顔の前で手を合わせた。
「お願い!今日だけ傘いれて?」
「別にいいけど…」
そんなに濡れてたらいれてやるしかないけど…
しばらく他愛もない話を続ける
だんだん家に近づいてきた時後ろから軽く上着を引っ張られる
「ちょっと、コンビニよっていい…?」
「どーぞ…?」
こんな時間に?しかも学校帰りなのに
「何買ったの?」
「あぁ…晩ごはんだよ」
「今食うの?」
少し下を向いた。聞いたらまずかったかな
「お母さん今日もいないから…」
「そっか…ごめんな」
俺を見てあいつは微笑む
いつもの顔だ…
「平気、慣れちゃったよ」
全然平気じゃないくせに…。
かこは大丈夫じゃないときいつもその顔してる。
だから、はじめて自分のこと話したいって思った。同じだって、言いたいくなった。
「俺んち、父さんいないから、わかる…」
「そうだったね…」
あいつは寂しげに遠くを見てから、また俺を見て笑った
「じゃあ一緒だ」
歩き出したかこに後ろから傘をさして、強がりだけど消えそうなくらい弱い後ろ姿に伸ばしかけた手を、ポケットにしまった。
