「のれよ」

あたしを見て自転車の荷台をたたく

「ありがと…」

風が前髪をかきあげる
としの匂いが近すぎてどきどきしてきた…

「としって前から自転車通学してた?」

「いいやー?」

あたしをちらっとみてまた前を向く

「バス代うかせるため」

カラカラとなる車輪の音が心地いい

「俺んち家族多いからさ」

笑ってるけど少ししんどそうでお兄ちゃん頑張ってるんだろうなと思った

「そっか…としは優しいね…」

穏やかな気持ちで心からそう思った

「だろっ」

得意げに笑うとしの横顔が夕日に照らされて余計に大人びて見えてなんだかあたしは寂しくなった

強い風がふいた今までで一番強く

「かこのほうが優しいよ…」

「なんかいったーー?」

としが勢いをつけて坂をかけのぼった

「なんでもねーよ」

やっぱり笑ってた