キュッ…
誰もいなくなった体育館であたしのダンスシューズの擦れる音だけが響く
「はぁ…」
遠くから片付けまで元気にやってる野球部の声や友達と別れそれぞれの帰路につく女子たちの声がする
あたしももう帰ろう…
簡単な片付けをすまして鍵を締める
夏の蒸し暑さで頬に汗が伝う
「あれ…?かこ?」
振り返ったらオレンジの夕日をバックにとしが立ってた
「あれ?とし帰ってないの?」
「怒られてた」
いたずらをした小さい子みたいに笑ってあたしの目の前までくる
「かこは?自主練?」
「そういうこと」
「相変わらずだな~」
またとしはあたしを置いて歩き出す
違う、としは知ってるはず、
あたしが家事をするために部活が終われば家に直行することを…
数歩進んで立ち止まっていたとしはゆっくりあたしを振り返る
「何?帰んねーの?」
全部知ってて全部気付いててそうしてくれてる
あたしには何も聞かない
でも話したら聞いてくれるんでしょ…?
