数分後…

かなとのお母さんと玄関前で会っちゃって『入っちゃって~』なんて言ってたけどほんとに入っちゃっていいのかな…?

「お邪魔しまーす…」

全く生活感がなくてきれいに片付けられた玄関を通りかなとの部屋へ向かう

コンコンコン…

「かなと…?入るよ?」

少し狭く感じるけど一人部屋にしては十分な広さで壁やカーテンは淡い青系で統一されている
爽やかで男の子っぽくてかなとによく似合う部屋だ

「誰…?」

壁を向いて寝ていたかなとがゆっくり起き上がる

「かこ…?」

「え、あ、まだ起きなくていいよ…!」

「大丈夫…」

グレーのスウェットの襟元をパタパタさせてベッドに腰かける
きっとまだ熱があるんだろう

「それ、どうしたの?」

あたしが持っているコンピニの袋をみて少し遠いところからきてるのがバレたらしい

「えと、プリン…」

あたしの言葉にまた不思議そうな顔をする

「しんやがかなと、プリン好きだって…」

「好き…ありがと」

なんか耐えきれないな…
かなとから少し離れた床に腰をおろす

無言の時間が痛かった

「告白…」

「え…?」

何の音もなかった部屋にぽんと落とされたかなとの声はいつもより低くて掠れていて余計に緊張してきた

「無かったことに、してないよな?」

真っ直ぐあたしを見つめる
息をするのも忘れるほど緊張してる

「して、ないよ…」

かなとがふいっと視線をそらす

「ちゃんと考えてる…?」

誰もいない外階段での出来事がフラッシュバックする

「ちゃんと考えろよ、どっちがかこを幸せに出来るか」

真っ直ぐで少し熱を帯びててとても痛い視線があたしの心にまで刺さる
目の前で飛び出すたくさんの言葉が頭の中に響く
いつもふわふわしてて優しいイメージしかなかったかなとが、怖い…

「かこ…」

ベッドのきしむ音…
すぐには理解出来なかった
苦しそうな顔をしたかなとが目の前にしゃがみこむ

触れられる頭が頬が顎が……熱い

「かこ…好きだよ」

伏し目がちになり囁いたかなとを見た瞬間はっとした
この表情に流されたら駄目なんだ…
自分の気持ちに気づいたんだから中途半端なことは出来ない
倒れるかなとをゆっくり押し返し頬に触れる手をはらう

「ごめん……」

絞り出した声はとても情けなかった
かなとが目を見開き固まる

「…ごめんっ」

二度目ははっきり言えた
涙が溢れそうになり顔を隠そうとしたあたしの手首をしっかりと掴む
目があったかなとはとても苦しそうで悲しそうで心が痛かった

知ってる、あたしは
ひとりでは抱えきれなくて溢れ出してしまう"好き"が伝わらない辛さを…痛みを…

どうにも耐えきれなくなったときにはかなとの部屋から飛び出していた