あ、かなと…
え、な、なんかフラついてない…?

「ちょっ…かなと、大丈夫…?」

フラフラしながら歩くかなとに近付く
あたしを見上げた瞬間かなとの体は前に倒れる
慌てて駆け寄ったあたしの肩に額をのせる
ぎゅっと掴まれた左肩は凄く熱い

「お。大丈夫じゃないか…」

呼吸の荒いかなとを支えきれなくてあたしは壁に寄りかかる
あたしの肩を掴んでた右手を壁につく
いわゆる壁ドン状態…
これあたし必要なくない…?
誰もいない外階段で変に距離が近いからだんだんとあたしまで熱くなる
熱とは違う熱さで…

「俺とあいつ、どっちが幸せにできると思う…?」

「え…?」

この距離で聞こえないはずがない…
なのに反射的に聞き返してしまった
きっとあいつってしんやのことなのに…

「そんなの…わかんないよ…」

十分な間をあけてあたしは答える
やばい、声が震える…

「なんで…?」

至近距離でかなとはあたしをちらりと見る

「だってあたしはあたしだから…」

ゆっくり唾を飲み込む…
動けない…
全身金縛りにあったみたいに

「じゃあもっとわかろうとしてよ…」

耳元で響く少し低めの声は切なげであたしは罪悪感でいっぱいになる…
ごめん、ごめんなさい…
あたしはその思いに応えられない
自分の気持ちに気付いた以上中途半端なことはできない…
頭を持ち上げたかなとはまたフラつく

「あたしの肩…使ってよ…」

かなとは真正面からあたしを見つめる

「あいつが好きなのにそういうの、痛いんだよっ…」

そ、んな…

コツンッ

あたしの額に自分の額をぶつける
かなり、近い…息がかかりそうなほど

「俺の方が幸せにできる…もっと、考えろ」

フラフラしながら教室に戻ろうとするかなとの後ろ姿を見つめる…

「ちょっ、かなとしっかり!!」

誰かが叫ぶ…きっとどこかで倒れたんだ
凄い熱だった
意識がもうろうとして今のこと忘れてくれたらいいのに…
そう考えるあたしはやっぱりずるい…