あたしの部屋には大きな姿見がある
引っ越すときお酒に酔ってない時の母さんがくれたもの
父さんにはずっと捨てろって言われてたけどもったいないからとってる
鞄からたくさんの紙を取り出す
この前部員にとったアンケートの結果だ
あたしはまず振り付けへの要望やリクエストから目を通す
そして毎回思いたった振りをすぐに鏡の前でためす
外からみるとどうみえるか
難易度はどのくらいか
部員の要望に答えられているか
全部前の部長さんから教わったことだ
クーラーはしんやの部屋についてるから二人の部屋を仕切るふすまは夏の間だけ開けてある
「かこ、テスト大丈夫なの?」
いつからかアイスを食べながらあたしをみていたしんやがのんびりと声をかけてきた
「夜型だから」
あたしは朝は弱すぎるんだけど夜はなかなか自信がある
「まぁひどかったらしんやに教えてもらう」
「えー…」
あたしがしんやに勝てるのは国語と実技教科だけ
理科もいい勝負かもしれない
文句をいいながらもきっと嬉しそうに教えてくれるんだろう
それからあたしはしんやがアイスを食べ終わるまでアンケートに目を通していた
たまにその振りがいいとかさっきのほうがいいとか意見をいってくれる
さすがしんやは長年やってきているだけあって技術もすごい
激しい振り付けも練習メニューも人一倍早くやり終えるし、指先まで意識していて体のしなりは女のあたしより綺麗だと思う
それになんといっても踊っているときの表情だ
ニコニコしていたり真剣だったりファンサービス全開だったりジャンルにあわせて表情をキープすることができてる
観客と一帯になれるダンスって感じかな…
そんなことを思っているとアイスを食べ終えたしんやに声をかけられる
「なぁかこ?」
「はぁーい?」
「突然だけど俺おもいっきり踊りたい…」
申し訳なさそうに笑うしんやをみてきっとテスト明けに迫った大会の練習がしたいんだろう
ここ最近ダンススクールのほうでもよく飽きないなってくらい踊っている
「あたしも思ってたよ、公園いこうか」
二人でひたすら日が暮れるまで踊ることにした
