流しに蛇口から雫が落ちる音がやけにゆっくり感じる…
「ちょっっ」
「まてよ…」
「俺、見たんだよ…しんやと、てかあの時図書室にいた」
「えっ…」
細い指が少し長くなったあたしの前髪をすくう
「二人って両思いだろうけど、あいつに譲りたくない」
部活の時間特有の騒がしさが遠くなっていく
「俺が好きだから…」
体育館のホイッスルの音も、大きな足音も、音楽室から流れるたくさんの楽器の音も…
全部全部、聞こえない…
うそ…でしょ…
苦しいくらい抱き締められてまた涙がこぼれた
日向の腕に心まで締め付けられてるみたいだった
