数分後…

「なぁ…」

前にいるあいつがあたしをちらりと振り返る

「何その髪」

「急いだからそのままで…」

私のおろした長い髪を見て不機嫌そうに言う

「いつものほうがいい…あんま見せんなよそういうの」

意味がわからない、そんなこといきなり言われるのも、顔を赤くさせてるのも、意味がわからない…
話せない、なんかできない、上手く…笑えない…

「あのさ…」

夏に近づいてるような生暖かい風が吹いてる
あたしたちの距離はさっきより遠くなってる

「昨日は、ごめんな…」

そんな悲しい顔は君に似合わない

「ちゃんと謝ってねーし、その…気にしてるみたいだし…」

いつものバス停で暖かい風があたしたちの髪を揺らす

「なんで、したの…?」

そっか、おごれって言ってついてこさせたのはその為か…
また悲しい顔して下をむく

「つい…」

ゆっくりとバスが停まった

「ごめんな…」

下をむいたまま申し訳なさそうに呟いた
それが答え、私をどう思ってるかの答え
あんな顔も声も見たくない聞きたくない
私が笑えば笑ってくれた?
気にしてないよっていつも通り笑えばよかった…?
バスに駆け込んでできるだけ後ろの席に座る
真っ暗な道を揺られながらすっと涙がこぼれた

私はこんなにも必死に君が好きだったんだ