生 意 気 な お 隣 さ ん *







もう、引越し早々に心が折れる。
なんて呑気に思いながら

朝早くに会わないためにと、家を出る。





「あ」
「あ」


「(なんでこうも綺麗に……!!)」





そう思ったのも束の間、
彼も早い出勤のようでばったり会った。

そんな私を見て彼は顔を顰めると





「おはよ、朝からブスとか最悪〜」

「おはようございます、朝から気分ガタ落ちです」





営業スマイルを貼り付けて、
彼に負けじと言い返すと

彼はムッとして「なにそれ!」と先にエレベーターに乗ってしまう。





「……んじゃ、お先」

「待ってください、これ待つの長いんですから!!」


「階段あるじゃん」

「ここ50階ですけど?!」





"仕方ないなぁ"と言って彼は私が乗ったのを確認してから一階のボタンを押す。

まるでこのエレベーターは彼のもののようではっきり言ってムカつく。



無駄に高いだけあって長い二人っきりの密室。
微妙な空気が漂っていて最初に来た時を思い出す。







「……なぁ、」

「!…はい」






そんな沈黙を破ったのは彼で。

彼は深く帽子を被って
こちらを無機質な綺麗な瞳で見つめてくる。







「あんた、オレの事知らねーの?」

「……柏木恋さん、ですよね?」

「それじゃなくて、職業」



「………モデルさん?俳優さんですか?」






少し考えて、彼にそう言うと
彼は大きな溜め息をついた。

そんな時、丁度つく一階。







「ほんっと、あんたって平凡なだけでなく、最近のニュースとかにも興味ねーんだな。」







彼はその一言を残すと、
そのまま先に歩いていった。

ぽかんと残された私は

嫌味だけ残した彼に今の気持ちを叫びたい。







「(結局、あんたは何者なわけ?!)」