「あのさ…」
と言い、僕に顔を近づけてきた。
耳元で、コソコソと話し出した。
「何だよ。」
「駅の近くに新しくカフェがオープンしたじゃん?そこのウェイトレスに、めっちゃ可愛い女の子がいるらしいんだ!!!だからさ…片切、今日の放課後一緒に見に行かね?」
きた。いつもの美女目撃ニュース。
「へぇ…名前は?」
「糸瀬瑠璃(いとせるり)。」
その名前を聞いて、僕は何故か、手に持っていた教科書を床に落としてしまった。
「どしたの。」
啓はそう言うと、僕が落としてしまった教科書を拾ってくれた。
「あぁ…いや…何でもない。」
動揺を隠しきれなかった。
[瑠璃]という名前。
それは、僕が中学の当時に付き合っていた、僕が初めて好きになった、女の子。